仮登記について

不動産登記

仮登記ってよく耳にしますが、どんな登記なんですか…❓

仮登記は順位を保全する効力があって、実務でもよく使います。それでは早速紹介していきます❕

そもそも仮登記とは❓

仮登記とは、順位を保全する効力あり、本登記をする際に後順位の重複した権利を抹消することができる登記で、大きく分けて次の2種類があります。

1号仮登記

実体法上は、所有権がすでに移転しているが、登記申請に必要な書類等が揃っていないケースです。例えば、農地の名義変更で農地法の許可は下りているが、許可証を紛失してしまった場合等や、登記義務者が書類に押印を拒否したり、登記手続きに協力してくれない場合等が考えられます。

2号仮登記

更に次の2つにわけることができます。

2号仮登記の書類

①所有移転請求権仮登記

②条件付所有権移転仮登記

まず①についてですが、実体法上、所有権はまだ移転しないけど、売買予約等をして請求権が発生した段階で行う債権保全のための登記です。

次に②についてですが、典型的な例は、農地法の許可が降りることを条件として売買を行う場合等に、許可が降りるまでに順位保全をしておきたい場合に行う登記です。

仮登記は移転することも可能

仮登記は第三者に移転することも可能で、実務上たまにみかけることもあります。例えば、売買予約の請求権を第三者に売買した時等が挙げられます。この場合も、仮登記名義人に登記識別情報が発行されるので、提供が必要です。

仮登記の登録免許税不動産の価格仮登記の登録免許税

主な仮登記の種類課税標準税率
所有権の仮登記不動産の価格1.0%
地上権・賃借権の仮登記不動産の価格0.5%
配偶者居住権の仮登記不動産の価格0.1%
地役権の仮登記不動産の個数1,000円
(根)抵当権の仮登記不動産の個数1,000円
1号所有権仮登記の移転不動産の価格1.0%
2号所有権仮登記の移転不動産の個数1,000円
仮登記の変更・抹消不動産の個数1,000円

登録免許税について詳しく見る

仮登記の本登記

仮登記を本登記にするには、利害関係人の承諾を得て、仮登記設定時の所有権名義人又は現在の所有権登記名義人と共同して申請を行う必要があります。下記の登記簿を例に説明させて頂きます。

権利部(甲区)(所有権に関する事項)

順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
1所有権移転平成18年2月3日 第2537号原因 平成18年2月3日売買
所有者 愛知県〇〇市〇〇 甲野太郎
2所有権移転請求権仮登記平成30年3月4日 第3458号原因 平成30年3月4日売買予約
権利者 三重県〇〇市〇〇 乙野次郎
3所有権移転令和3年4月5日 第4786号原因 令和3年4月5日売買
所有者 岐阜県〇〇市〇〇 丙野三郎

権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)

順位番号登記の目的受付年月日・順位番号権利者その他の事項
1抵当権設定令和3年4月5日 第4787号原因 令和3年4月5日金銭消費貸借同日設定
債権額 金4,000万円
利息 年2.575%(年365日日割計算)
損害金 年14%(年365日日割計算)
債務者 岐阜県〇〇市〇〇 丙野三郎
抵当権者 東京都渋谷区〇〇
ABC銀行(取扱店岐阜支店)

甲野太郎と共同して申請する場合、丙野三郎及びABC銀行の承諾、丙野三郎と共同して申請する場合、ABC銀行の承諾をそれぞれ得なければならず、承諾書を提供すると権利が抹消されます。

仮登記の抹消

厄介なのが、仮登記のついている不動産の名義変更をするケースです。仮登記を抹消するには、仮登記名義人の承諾を得るか、仮登記名義人に抹消をお願いするしかありません。

抹消に協力してくれない場合は、承諾書の代わりに裁判の判決確定書等の書類が必要になり、非常に手間がかかるため、仮登記がついている土地は、実務的に取引がしにくいものです。

あと、気を付けたいのが、所有者=仮登記名義人になった時に混同を原因として、仮登記の抹消を忘れてしまうことです。過去にあった事例として、Aの名義の土地でBの仮登記がついており、Bに相続して移転したため、司法書士が忠告して、Bの仮登記を消しておくべきだったのに、そのままBが亡くなってCに相続して更に移転してしまったケースがあります。この場合、Bの仮登記を抹消するのはけっこう厄介ですので、仮登記が必要なくなった時は早めに消しておきましょう。

2023年2月27日不動産登記